はじめに
生産性はモノを作る企業にとって競争力に影響する重要な要素です。一方で生産性は後回しにされてしまうものというのは多くの企業で共通することではないでしょうか。そうなってしまうのは、生産性について経営陣がしっかり理解していなかったり、生産性という言葉が曖昧に使われたり見えにくいものであることなどが要因だと思います。
この記事ではUnderstanding the concept of productivity*1で提案されている3Pモデルというものを紹介します。
3Pモデルは生産性と生産性に関わる用語の定義をするモデルです。
まずは生産性の向上について詳しく見ていきます。そして意味の近い用語である収益性(Profitability)、パフォーマンス(Performance)、効率性と有効性(Efficiency and effectiveness)について整理します。最後に3Pモデルを紹介します。
Understanding the concept of productivityで扱っているモノはサービスではなく製品であることを注意しておきます。
生産性の向上
生産性の向上と言った場合にいくつかの意味が含まれます。
生産性はアウトプット(Output)とインプット(Input)の比で定義されます。
この時に生産性を向上させるというと、5つの場合があります。
また、次に挙げる点も理解しておく必要があります。
- インプットとは何か?
- 労働力や資本など
- アウトプットとは何か
- 複数の製品をまとめてアウトプットと呼んでいるのか単一の製品のみの話をしているのか
- どのレベルでの話か
- マネジメントレベルの話なのか、実際にモノを作ってる工場の組み立てラインでの話なのか
次に生産性(Productivity)に似た用語を整理します。
Profitability
収益性(Profitability)は以下で定義されます。
収益性はインプットにかかる費用をどれだけ回収できるかという金銭的な部分(図の右側)と、生産性に関わる物質的な部分(図の左側)に分けることができます。
Performance
パフォーマンスは企業の競争における目的や、コストパフォーマンスなどというようにコストやスピード、品質、信頼性、柔軟性*2の総称を意味する言葉です。
コストやスピード、品質、信頼性、柔軟性などのパフォーマンスの目標は生産性に大きな影響を与えます。
Efficiency and effectiveness
有効性は「目的に対して正しいことをすること」についてで、効率性は「(目的に関係なく)正しいやり方ですること」についてです。効率性は定量化しやすく、リソースの使用率に関わり、生産性のインプットに影響を与えます。一方で有効性は定量化が難しく、顧客の価値などに関わり、生産性のアウトプットに影響を与えます。
インプットからアウトプットを得るプロセスにおいて、高い効率性と有効性は高い生産性に繋がります。
3Pモデル
3Pモデルはこれまでに挙げた用語をどう使い分けるかという概略図です。
3Pモデルの中心部分の生産性はアウトプットとインプットの比で表されます。例えばアウトプットは仕様を全て満たす製品の数、インプットはプロセスで消費される全てのリソースなどというように定量的に定義されます。
それに加えて収益性と言った場合は金銭的な意味も含みます。そしてさらにパフォーマンスと言った場合は、製品の品質やコストといった目標の総称として用います。
インプットからアウトプットを得るプロセスにおいて、アウトプットに着目する時には有効性を、インプットに着目する場合は効率性という用語を使います。それぞれの意味はすでに述べたとおりです。
おわりに
前回のソフトウェア開発の生産性に引き続き生産性を取り上げました。この記事で取り上げた内容や画像はUnderstanding the concept of productivity(Tangen, S. (2002))のものです。
生産性と言った場合には品質の意味は含まないなど、議論する時にこういう枠組みがあると話を進めやすいかなと思います。まだ私はもやっとしていますが、引き続き何かしら文献を読んでいこうと思うので良い読み物がありましたら教えてください。
*1:Tangen, S. (2002). Understanding the concept of productivity. Paper presented at the 7th Asia-Pacific Industrial Engineering and Management Systems Taipei.
*2:この5つの目標は「Business performance measurement: unifying theories and integrating practice.(Andy Neely. In July 2000)」で取り上げられているものです。読んではいないのですが、QCDFと同じような使い方をすると思われます。