「ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則」を読んだので書評を書く

はじめに

『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』 (原題: Good to Great: Why Some Companies Make the Leap ... And Others Don't, 2001年)を読んだので書評を徒然と書きます。

この書籍を読んで僕が良いなと思ったのは、企業のイメージが湧きやすいストーリーとともに地に足のついていると感じる「飛躍の法則」が紹介されていたことです。ビジネスマンに人気らしいこのシリーズですが、私は初めて読みました。タイトルは少しうさんくさいと思っていたのですが、読んでみると内容に信頼感があり、何年か後にまた読みたいなと思えるようなことが書いてありました。

ビジョナリー・カンパニー2

ジェームズ・C・コリンズによる著作「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの2作目です。1作目では「偉大な企業」を調査した結果が書かれています。2作目では「偉大な企業はいかにして偉大な企業になったのか?」をテーマに調査しその結果が書かれています。

調査対象は、それまでは「良い企業」だったのが、とある転換点から「偉大な企業」へと飛躍を果たした企業です。以下のような条件で行われています。

  • 1965年から1995年までにフォーチュン誌のアメリカ大企業500社に登場した企業
  • 転換点以前は株式運用成績が15年間市場並み以下が続いていること
  • 転換点以後は15年に渡って市場の3倍以上の成績を出していること

調査のプロセス

プロセスは次のようになっています。

  • 第1段階 探索
  • 第2段階 比較対象
  • 第3段階 ブラック・ボックスの内部の調査
  • 第4段階 カオスから概念へ

第1~2段階 - 偉大な企業の探索と比較対象のピックアップ

第1段階で調査対象の企業を冒頭で上げた条件を元にピックアップします。第2段階で比較対象企業をピックアップします。なぜ比較をするのかに関して書籍では「オリンピックで金メダルを取った決め手を調べたい時に、金メダリストだけを調べるとコーチが付いていたとわかったとする。だが、金メダルを取れなかった選手にもコーチはいる。重要なのは金メダルを取れた選手と取れなかった選手の違いを一貫してもたらしているものは何かということである。」というような例えで説明しています。

第1段階と第2段階で明らかになった「偉大な企業」とそうなれなかった「良い企業」をグラフにすると次のようになります。

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図を見ると転換点で何があったのだろうと思ってしまいます。

第3段階 飛躍し「偉大」になれた企業と「良い止まり」な企業の分析

第3段階では、洗い出した企業についてインタビューや財務指標などにより、定性分析や定量分析を行い、調査チームで議論を行います。

ここで分析の結果明らかになるのは、企業が飛躍を遂げるにあたって、飛躍への取り組みに関する名前をつけて社員を動機付けたりめぼしい取り組みはなかったことです。それどころか、企業買収やスター経営者を外部から呼んだりということもありませんでした。他には技術革新が飛躍のきっかけには関係ないなど面白い事実がいくつか紹介されています。

第4段階 飛躍の法則の構築

第4段階は分析結果から偉大な企業に飛躍をする法則を構築する段階です。何度も修正しながら作り上げていき、最終的な結論を図にしたものが次です。

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飛躍は急激に訪れたのではなく、徐々に段階を経て地道に飛躍していったというようなことが書かれてあります。飛躍への段階をいくつか分けて、それぞれでこういうことが言えるというような概念が図に言葉で書かれてあります。

そのうち

  • 第5水準のリーダーシップ
  • 最初に人を選び、その後に目標を選ぶ

について触れようと思います。

第五水準のリーダーシップ

ざっくりいうと第五水準のリーダーシップとは「謙虚」で「意思が強い」ことです。経営者の能力の水準を5つに分けた時に調査結果から「飛躍を果たす転換点には第5水準のリーダーシップを持つリーダーがCEOであった」ことがわかりました。

彼らは、私利私欲で組織をだめにすることはありません。なぜなら野心を持っており、絶対にそれを達成しようと思っているからです。

絶対に達成する意思の力というような話は南波さんのコトに向かうこと、思考は現実化する...などなどよく聞く気がします。

第3章 だれをバスに乗せるか 最初に人を選び、その後に目標を選ぶ

アメリカにファニーメイという金融機関があります。そこで経営状況が過去最悪だったときにCEOにマクスウェルが就任しました。彼がまずやったことは驚くような経営戦略を作ったなどではありません。適切な人材だけを残すことです。幹部陣に現在の過去最悪に厳しい状況を説明し、今後行わなければならない仕事をやれるか?と投げかけました。耐えられないなら辞めたほうがいいと伝えます。そうしてかなりの人が辞めたそうですが、残った人たちは絶対にやってやるという意思を持った「適切な人材」だけでした。もしかすると「能力のある素晴らしい人材」も辞めたのかもしれません。重要なのは素晴らしい能力を持った人がいればいいわけではないということです。

...ファニーメイではその場しのぎは通用しない。自分の仕事を深く理解しているのかいないのか、どちらかだ。理解していないのなら、ここにはいられないと」

ジム コリンズ. ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1035-1037). Kindle 版.

第5水準のリーダーは会社からいなくなっても引き続き会社は偉大な成績を残します。それができるのは育成など様々な要因がありますが、適切な人材がいるということも大きい要素だと思います。

エンデュアランス号

書籍の話ではないですが、1914年に南極横断に挑戦し、漂流することになってしまったエンデュランス号について関連して書きます。物語の主人公は第5水準のリーダーシップを持つシャンクルトン隊長です。彼と隊員28人は南極横断の失敗により漂流しとある島にいきつきました。そのままでは死を待つだけだと隊長と数人が小舟で救助を求めに行きました。残された22人の隊員はワイルド副隊長をリーダーに救助が来るまでの4ヶ月を全員で生き残りました。極限状態なら食料を求めて殺し合いも起こったかも知れません。しかし助け合って4ヶ月全員生き残りました。全員が訓練された優秀な探検隊であったわけではありません。シャンクルトンは南極横断にあたって適切な人材を採用し、育成やチーム作りをしていました。

いかにしてバスを作るか

適切な人材を選ぶことを書籍では「誰をバスに乗せるか」というような表現をしています。自分に置き換えるとなかなかプレッシャーを感じます。自分はバスに乗るべき人材か?書籍では会社の経営陣が対象ですが、自分が所属するチームに置き換えると少し胃が痛くなります。

おわりに

この書籍に書いていることは成功の話です。同じ条件ならば同じ結果になると仮定しても、条件を揃えるのは現実的に無理だと思います。とは言え、飛躍の法則はとても面白く示唆深い内容です。自分や置かれている状況に対する参考として今後活かしていこうと思います。