「君主論 」を読んだので書評を書く

はじめに

君主論とは1532年にニッコロ・マキャヴェッリによって書かれた政治論文です。その岩波文庫から出版されているものを読みました。

君主論 (岩波文庫)

君主論 (岩波文庫)

本の内容は凄くざっくりいうと「こういう君主は成功する」「こういう君主は失敗する」のような君主について、またはその君主政治の組織自体についてです。16世紀のイタリアで外交官や秘書官を経験したマキャヴェリが様々事例を元に執筆しました。このいろんな事例から帰納的に主張を導き出す感じは現代で言うとビジョナリー・カンパニーに近いかもしれません。

君主論の面白いところ

マキャヴェリのリアリズムさ

全体を通して感じるマキャヴェリのリアリズムさが面白いです。君主の理想像を描くのではなく現実の君主を客観的に捉えています。例えば君主の周りは忖度だらけだから真実を言う賢者を側に置けだとか、環境が変わってもやり方を変えないから君主は失敗するなどです。当時は言論の自由がどれほどあったのかわかりませんが、言いづらそうなことや運命や神で語られたであろうことを冷静につっこみを入れているところが面白いです。

今にも通じる内容

「平時の時こそ訓練すること」「民衆に憎まれてはならない」「狐と獅子を範とすること」「慈愛より冷酷さ」などなど詳細は書籍をみて頂きたいのですが、今にも通じる示唆に富んだ内容が書かれてあります。今の日本、総理大臣、アメリカやデモなどなど、現在の社会情勢に重ね合わせてマキャヴェリ的な見方をするとこう言えるのではなど、今にも通ずるのではないでしょうか。

慈愛と冷酷

慈愛と冷酷について少し内容を紹介します。君主に必要なこととして「恐れられること」と「愛されること」どちらがいいでしょうか。できればどちらもあれば良いですが、マキャヴェリは両方は無理だと言っています。さらに恐れられる方が良いと主張しています。なぜなら、君主には成果を出すために必要悪があり、決断力を示さねばならないときもあるからです。例としてチェーザレという君主が無法地帯と化したロマーニャ地方を冷酷さにより平定したことをあげています。

愛については、民衆の愛は変わりやすく利益が絡めば断ち切るということを言っています。実際はどうでしょうか?メディアなどで意見が左右されたり、何となくそのような側面もあるような気もします。もちろん当時は中世ヨーロッパなので、命にも関わることもあったでしょうし、今とも事情は異なるでしょう。

君主論を楽しむために

先に事前知識をある程度持っておく

君主論を読むと書かれてあるのは君主政体(君主政である政治組織)について、世襲によるものの場合はどうだとか、市民から君主になった場合はどうだとか、聖職者による場合はどうだなどで、ここから何を読み取ろうかと読みづらさを感じました。

なので、岩波文庫の場合は最後の方に訳者の河島 英昭さんが書いてある解説を先に読んだり、中世ヨーロッパについて軽く調べてから読むなどする良いと思います。時代背景などがわかると内容が入ってきやすかったです。また、NHKの100分de名著の君主論もおすすめです。

おわりに

マキャヴェリズムという「目的のためには手段を選ばない」だとか「権謀術数」だとかいう意味の言葉があります。君主論から派生して生まれたということですが、君主論を読むとそう単純な意味ではないなと思いました。マキャヴェリ的に言うと例えば君主は大衆に憎まれるやり方では失敗します。つまり手段を選ばないと目的が達成できないことがあります。

そのようなマキャヴェリの見方についてもう少し深めたいなと思うのですが、もし君主論を読んで語りたい方がいましたら私に声をかけてください笑