はじめに
丹青社の吉田清一郎さんの「アート×テクノロジー、文化が花開く社会を目指して」という講演を聞きましてアートの可能性を感じました。以下は講演の記事ではないですがテーマは同じ感じです。
美術作品の証明書にブロックチェーン技術が使われているとのことで調べたところStartailというプラットフォームサービスを見つけました。どんなサービスなのか軽く調べたのでアート業界との関連も含めて簡単にまとめました*1。
注意
詳しい内容はコチラの資料に書いてあります。この記事に載せている画像も資料のものです。
アート業界のプレイヤー
アート業界には以下のようなプレイヤーが存在します。
- アーティスト
- オーナー(コレクター)
- ギャラリー・百貨店・オークションハウス
- キュレーター・批評家
現在支配的なプレイヤーはギャラリー・百貨店・オークションハウスだそうです。有名なギャラリーなどで扱ってもらうと購入に繋がりやすいということでしょう。
理想はアーティストとその作品を欲しいオーナーが直接結びつくのが良いと思いますが、インターネットで売買されないのはなぜでしょうか。
美術作品の課題
アート流通市場において価値の担保は作品証明書という紙です*2。紙はコピーが可能なので証明書自体の真贋*3が怪しいこともあるそうです。流通している美術作品の50%は贋作であるという調査結果が2014年にFine Art Expert Instituteによって発表されました。ギャラリー・百貨店・オークションハウスで扱われるというのは一定の信頼を得るのでしょう。
紙の証明書に起因する問題に対してブロックチェーンによるデジタルの作品証明書を使うことが考えられてきました。ブロックチェーンに記録されたデータは改ざんが困難であるため今回のような問題に活用できます。
既存のプラットフォームの課題
既に紙を置き換えるという同様の目的のオンラインプラットフォームは開発されてきました。中にはブロックチェーン技術を使うものもあります。しかし以下のような課題があるようです。
- 必ずしも全ての提案がアート業界の構造を踏まえたものになっていない
- 乱立するプラットフォーム間で規格が十分に統一されていない
結果プラットフォームに求められる条件は以下だそうです。
- アップグレーダビリティ - 各プレイヤーのインセンティブ設計や将来登場する新たな技術に合わせて出所・来歴に付帯するルール設定や登録情報のフォーマットを適切に変更出来ること
- インターオペラビリティ - 同様の試みを行う他のプラットフォーム間で記録の受け渡しが出来ること
Startrail
Startrailはブロックチェーン技術の活用により以下の3 つの柱を備えた、美術作品取引の信用担保と、その更なる発展を支えるインフラストラクチャーです。
- 作品の出所と来歴の担保
- 新たな流通管理手法への対応
- システムのアップグレーダビリティとインターオペラビリティ
ブロックチェーンによるデジタル作品証明書は次のようになります。
図を見ると作品の情報と関連アカウント情報があります。例えば作品情報に有名な美術館で展示された履歴などがあると、作品の価値に信頼性が増します。関連アカウント情報にはオーナーのイーサリアムのアドレスが記録されているので誰が所有者かわかります。そのような記録はハンドラーが行います。ハンドラーはギャラリーだったりECサイトだったりします。
以下は販売の流れです。
ハンドラーはハンドラー登録書を登録します。このハンドラー登録書にはハンドラーに関する情報と、ハンドラールールセットという受け入れる作品の条件が登録されています。この状態で作者が作品を出品し、購入されるまでは次のようになります。
- 作者がハンドラールールセットに同意した上で売買サービスに作品を出品すると共に、作品ルールセットを設定する
- 購入者は作品のルールセットに同意し、作品を購入する
- 購入者は売買サービスに作品代金を支払う
- Startrail上の作者アカウントからこの売買サービスのアカウントに作品証明書が一時的に委託される
- 作者もしくは売買サービスは購入者に作品を発送する
- 購入者が作品を受け取ったことを確認して、売買サービスのアカウントから購入者のアカウントに作品証明書が移転され 、この売買サービス(一次販売ハンドラー)での売買記録が作品証明書の来歴に追加される
- 売買サービスは作者に販売代金を支払う
おわりに
この仕組みを運営する人を含めてプラットフォームという印象を受けました。まだまだ課題はあるかと思いますが、この仕組が大衆化していくとアートの価値に信頼性が増して面白いと感じました。