「心脳マーケティング」を読んだので書評を書く

はじめに

「心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす (2005)*1」という本を読みました。著者はハーバード大学経営大学院名誉教授のジェラルド・ザルトマンという方でマーケティングや消費者行動論を専門にされています。

この本は消臭力のCMなどを手掛けた鹿毛さんがお薦めされていたので読みました。触りの部分だけですが紹介したいと思います。また書籍に書いていない私の解釈も書きます。

誰が読む本か

以下のような方に良いのではないでえしょうか。

  • 顧客の気持ちを知りたい人
  • 選ばれる、使ってもらえるサービスを作りたい人
  • 最近のマーケティングの元になる考えを知りたい人

従来のマーケティング手法の問題

従来のマーケティング手法を簡単な例で説明します*2

例えば20代女性100人に化粧品に感じることをアンケート調査をしました。その結果を元に「こういうプロモーションなら刺さる」「これなら価値を感じてもらえる」のように議論して売り出し方考えていきます。しかしこのような方法には問題があり、売上に繋がらなかったりします。

問題はアンケート調査くらいで人の心理はわからないということです。人間の思考プロセスの95%は無意識で行われるそうです。5%の表面的な情報を元にしているならば危険ですね。

6つの誤り

消費者について誤った考えでマーケティングが行われていたのが従来の手法です。誤った考えとして以下のことが挙げられています。

  1. 消費者の思考プロセスは筋の通った合理的・直線的なものである
  2. 消費者は自らの行動と思考プロセスを容易に説明することができる
  3. 消費者の心・脳・体・そしてそれらを取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として調査することが可能である
  4. 消費者の記憶には、彼らの経験が正確に表れる
  5. 消費者は言葉で考える
  6. 企業から消費者にメッセージを送りさえすれば、マーケターの思うままにこれらのメッセージを理解してくれる

心脳マーケティング

心脳とは「心とは脳が活動することである」という概念を意味する言葉です。心脳マーケティングでは認知心理学や脳神経科学など様々な分野の知見をマーケティングに活用します。

顧客中心主義

心脳マーケティングは顧客中心主義的な手法です。

これを出すのは例として合っているのかわかりませんが「顧客は本当に欲しいものを知らない」という例として以下の画像を見たことがあるでしょうか。オレゴン大学の実験が元ネタらしいです。

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最初からタイヤのブランコを作ろうと思ったら顧客に何度もヒアリングして、言葉の背景や感情を読み取ろうとすると思います。タイヤのブランコなら乗り方や楽しみ方も変わってくるかもしれません。そのように顧客の表面的には出てこない本当の声を聴こうとするのが顧客中心主義です。そうしてようやく顧客に価値を提供することができます。その時は顧客も提供される価値を理解している必要があります。

深層心理を知るためには

凄くざっくり説明しますが、1つにはメタファーに着目すると良いそうです。メタファーというのは比喩表現です。どういう比喩の仕方をしているかで無意識にどういうことを感じているかを理解します。

グループインタビューなどは表面的なものしか聞き出せないので、1対1の場がある方が良いそうです。また書籍にはZMET調査やレスポンス・レイテンシー調査などいくつか載っているので読んでみてください。

おわりに

相手の深層心理を知るには自分の深層心理を理解することが訓練になるようです。なぜその商品を買ったのかなどを日頃考えて見ると良いかもしれません。スティーブ・ジョブスのようなタイプは無意識にある本当に欲しい物を見つけるのがうまいのかもしれません。

*1:How Customers Think: Essential Insights into the Mind of the Markets. 2003

*2:あくまでも例です