「State of DevOps Report」の歴史

はじめに

2019年「State of DevOps Report」というDevOpsに関する調査研究のレポートがDORA社とPuppet Labs社で別々に発表されております。前は一緒にレポートを発表していたのですがいつからかそれぞれ独自に調査研究するようになったようです。

そこで(歴史と言っても数年ですが)State of DevOps Reportそのものについて簡単にですが調べてまとめました。

State of DevOps Report

Puppet Labs社によるDevOps研究の開始

2012年からPuppet Labs社はDevOpsに関する研究を行ってきました。Puppet Labs社はGene KimへDevOps研究のプロジェクトへの参画を呼びかけます。Kimはハイパフォーマンスなテクノロジー企業を1999年から研究していました。Tripwireの元CTOでIT Revolutionの創業者です。KimはJez Humbleに応援を呼びPuppet Labs社の協力の元、2012年と2013年に「DevOps Survey」を出します。HumbleはThoughtWorks社の元開発者であり「The DevOps Handbook」や「Lean Enterprise」などの共著者です。

Nicole Forsgrenの参画

2014年から経営情報システムの博士を持つNicole Forsgrenが参画しました。Forsgrenにより行動科学を応用した調査分析が行われました。そして「State of DevOps Report」として2014年から2017年まで毎年研究結果が発表されました。また、2015年にHumbleはDevOps Research and Assessment (DORA)社を創業しCTOに、ForsgrenはCEOになります。形としてはKimがIT Revolution社としてDORA社の研究をサポートする感じだと思います。ただ実質的には変わらず2015年も引き続き3名とPuppet Labs社でDevOps Reportが作成されていたようです。

Accelerate

2018年に2014年から2017年の成果をまとめた書籍である「Accelerate: The Science of Lean Software and DevOps: Building and Scaling High Performing Technology Organizations」が発売されました。この日本語版は前回前々回の記事で紹介しました。

Googleによる買収

2018年にはDORA社がGoogleにより買収されます。DORA社のパートナーはPuppet Labs社からGoogle Cloud社になりました。

Puppet Labs社は2018年からも引き続き「State of DevOps Report」を発表しています。

買収後DORA社はタイトルを「Accelerate State of DevOps Report」と変えて2018年、2019年と発表しています。

2014年から2017年までのState of DevOps Report、そして買収後2018年と2019年のAccelerate State of DevOps ReportはGoogle CloudのWebサイトに掲載されています。

おわりに

2018年からPuppet Labs社とDORA社で別々に調査研究するようになったことがわかりました。どちらのDevOps Reportも結論は同じく「ソフトウェアデリバリのパフォーマンスが上がれば組織の業績も上がる」というところです。ただそれぞれのDevOps Reportの内容はちょっと違います。例えばDORA社は2018年にソフトウェアデリバリのパフォーマンスを見る指標に可用性を追加しています。別々の視点が加わって今後もDevOpsに関する調査研究が進むことを願います。

追記

Nicole ForsgrenのGitHub社への移籍

Nicole ForsgrenがGoogle Cloud社からGitHub社に移籍しました。

A new adventure — nicole forsgren, phd

GitHubMicrosoftに以前買収されました。同様に以前買収されたLinkedinではEconomic Graphという従業員の能力の可視化に関わる研究をしています。目指すところは企業の仕事と従業員のマッチングです*1

Forsgrenの研究では現在はソフトウェア・デリバリーに着目されています。今後研究内容も広がりそうなので、Linkedinの研究も合わさって、Microsoftが人材や組織をテーマにした面白い事業をする日が来そうですね。

参考

*1:詳しくはLinkedIn Economic Graphへ。